読書メモ:GE帝国盛衰史 「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか

巨大企業の崩壊を描いた書籍として興味を引かれ、読み始めた。

私自身、GEについての基礎知識がほとんどない(エジソンの会社、ジャック・ウェルチくらいしか知らない)ことや、章立てが時系列になっていないこと、全般的に文章が冗長であること、伝記的な記述が多く分析が少ないことから、途中は読み飛ばすことが多かった。しかし、後半はどうなるのか気になり、最後のほうは面白く読めた。

読む前にWikipediaの「ゼネラル・エレクトリック」の項目を見ておけば、理解が早かったかもしれないと、読み終わった後に気づいた。

以下、私のメモ。

単純に何か一つの要因に衰退の理由を求めることはできないが、その背景には以下のような事象があった。

  • 配当と自社株買いへのこだわり。過去から続いてきた慣例やCEOの面子。
  • 成長のためのトップダウンの目標設定とプレッシャーからの不正(会計操作)。
  • 本業の信用力に基づいた資金調達による金融、M&Aへの偏重。成長のためのM&A。
  • マーケティング先行と階層的組織構造。
  • 問題の先送り。
    • 隠された問題事業(介護保険事業)。
    • GEパワーによる現金を伴わない利益の計上。
  • 再起を賭けた取り組みの失敗。
    • デジタル化
      • シリコンバレーの企業のように見られたい
      • 完成前のソフトウェアの売り込みと顧客ごとのカスタマイズに
      • 一貫した戦略やプロセスの不在、アジャイル開発するには規模が大きすぎる
      • 営業も何を売っているのかわからない
    • 重厚長大部門の刷新
      • 独禁法との兼ね合いでの買収が困難に
    • エネルギー事業の失敗
      • ガス事業へ傾倒したが、再生可能エネルギーが伸長。
  • 機能しない取締役会や、反対意見を言えない雰囲気
    • 反対なら辞めろ。
    • 強い反対がなかったことは、思ったことを正直に言えないという、GEに染み付いた見えない危機。

個人的な感想としては、イメルトCEOが悪く描かれているが、ウェルチCEO時代(あるいはそれ以前)から続いていた成長志向(成長のための成長)が問題の本質だったのかもしれない。

GEが失敗したBtoBの産業機械/医療機器系のデジタル化も、KOMATSUの重機事業では成功しているため、目のつけどころが悪いということでもないのが難しいところだ。(その戦略の実行には失敗しているが。)

フラナリーCEOやカルプCEOの再建は無駄なコスト削減や分社化を通じて稼げる事業に絞り込んでいるという方針である。(それは必要なことではある)。一方で事業の成長という観点から見ると、イメルトのようなチャレンジも必要であるように思うため、どのCEOが優れているということも言えず難しい。

GEが失敗した理由は見えてくるが、ではどうすればよかったのか?と問われると明確な解がないなと感じた。

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