古い不動産をDIYで修理しながら暮らすという生活に、憧れをもっている。安価で購入でき、自分好みの住まいを作り上げることができる。しかし、現実はそう簡単ではない。漫画「糸島STORY」を読んで、その厳しさを再認識した。
ボロボロの平家を買ったら最高だった話というnote記事で紹介されていた家がとても素敵だなと思って読んでいたが、後日はてなブックマークのホットエントリーにも上がってきていた。そんな中で気になるコメントがあった。
糸島のボロ家買って鬱みたいな漫画読んでこっちも鬱になってたので読めてよかった。
興味を引かれ、その漫画を検索したところ、タイトルは「糸島STORY」だった。漫画自体はmin.tやKindleで無料で読むことができる。
「糸島STORY」の内容は、古い別荘物件に移住した夫婦が、ヤバハウスと称して日々発生するトラブルを紹介するというものだ。若干の誇張は感じるものの、続きが気になり、1日で最新話まで一気に読み進めた。
ときおり古い別荘物件の問題を紹介している資産価値ZERO -限界ニュータウン探訪記-を観ていることもあり、ある程度の知識は持っていたが、古い別荘物件に実際に住む「ヤバさ」を改めて感じた。
別荘物件の特殊性
別荘は日常の住まいではないため、通常の生活に必要な要素が省かれていたり、趣味を反映した特殊な造作が施されていたりする。糸島STORYでは、謎の室内滑り台や、上層階の梯子、マジックミラーの浴室ガラス、広すぎるテラスなどは別荘ならではの造作と思われる。一方で、狭すぎる玄関や、階段、室内の洗濯機置き場など、日常生活に欠かせない要素が不足している。
このような別荘物件と比較すると、大多数の生活ニーズの充足を目指して設計されている建売住宅の間取りのよさを改めて実感させられる。
断熱・気密性の低さ
古い戸建て物件は、コストや技術仕様が古いため、断熱性能や気密性が低いことが多い。作中では雨漏りや隙間風、大量の虫の侵入といった問題が発生していた。雨漏りの修理は屋根や天井裏にアクセスする必要があり素人には難しい。隙間を埋める作業も膨大な手間がかかる。断熱性能が低いと、冷暖房効率が悪く、暑い・寒い家となり、光熱費が嵩むことにもつながりそうだ。
特に、マンション暮らしが長いと、断熱性能の重要性を忘れがちだが、戸建てでが暮らしにおける重要なファクターであると実感する。
ライフラインの脆弱さ
作中では、何度か停電や断水のシーンが描かれていた。冷房が使えず、トイレが流せなくなると生活が一時停止してしまう。市中から離れたエリアでは、配電網も弱いのかもしれない。
また、井戸水を利用も登場するが、水を引き上げるタンクや専用の浄水器を取り付けるなど、管理が大変そうだ。ガスについての記述はなかったが、おそらくプロパンガスであり、これは費用がかさむ原因となるだろう。
補修やリフォームはプロに依頼が必要
漫画を読んで最も現実的だと感じたのは、大規模な補修やリフォームは結局専門家に頼らざるを得ないという点だ。作中でも、細かなDIYは自分たちで行っていたが、水回りや階段の造作など、大きな作業は専門業者に依頼していた。
DIY系YouTuberを見ていると、自分でもできるかもと思うかもしれないが、知識・工具・什器手配・時間などを考えると、やはりプロに任せた方が無難なのだろう。(あるいはそれを趣味として取り組めるくらいに、相応の時間や費用を投下できることが前提)
漫画を最新話まで読んだあとに奥さまがやっているYouTubeを観た。漫画ではめちゃくちゃ奥様が可哀そうに描かれているけれども、漫画に描かれていることが全てではなく、豊かな自然や景色などそれなりに楽しい生活が送れているような部分も垣間見れて安心した。
とはいえ、この「糸島STORY」は古い別荘物件の難しい部分を垣間見ることもできて、面白かった。