小説「地面師たち」を読んだ感想

Netflixでドラマ化されたことで話題になっている作品。興味を持ったけど、わざわざNetflixを契約するのもお金がもったいないと感じてしまい、小説を購入して読んだ。とはいえ、今あらためて予告編やプロモーション動画を見ると、Netflix版も観てみたくなってきた。これはまたおいおい。

以下、小説版の感想。ネタバレを含む内容。

  • 主人公の拓海の妻子がおかれた状況が悲痛過ぎて、フィクションとはいえ読んでいて辛い。父親の刑務所からの手紙の文面もよく書かれており、それがゆえに読んでいて辛い。
  • 実在する積水ハウス地面師詐欺事件をモデルにしているため、ノンフィクションぽさを期待して読んでしまう。当時のニュースは見ていたし、改めてWikiや海喜館の訪問ブログなどを読んでから小説を読み始めたため、フィクションとしての演出が目立ってしまい、特にハリソン山中の悪役像が完璧過ぎて現実感がない。その点はやや興ざめしてしまった。特にラストシーンでは拓海に刺されて死んでほしかった。(私が拓海に感情移入し過ぎなのかもしれないが。)
  • そのため、積水ハウス地面師詐欺事件のノンフィクションがあれば読んでみたいとも感じた。(調べたところ、地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団というルポがあったので、今度読みたい。)
  • とはいえフィクションゆえの緊迫感のある演出、とくに石洋ハウスと、麗子の面会の一連の緊迫感はよかった。
  • 刑事の辰についてはより深く描写してもよかったかなと思う。演出としての必要な存在ではあるものの、ハリソン山中への執着の理由が浅かったり、割と失敗なく、最短距離で拓海に到達してしまうのは面白みに欠けるように感じた。
  • わたしが気が付かなかっただけかもしれないが、回収できていない伏線があったように思う。なぜ川井菜摘は地面師たちの活動に気がついて内容証明を送ったのか、沖縄から予定を前倒しで帰った理由は何なのか?(演出家との諍いなのか、地面師に気づいてなのだかが不明。)内容証明のくだりは積水ハウスの事件でも存在したので、それを踏まえてだと思うが描画が少なかったように思う。

と、つらつらと書いたが、総論面白い小説であった。

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